弊社「非営利化」のお知らせ

弊社は2022年2月22日をもって定款を変更し、「非営利」法人になりました(※)。

※ この定款変更に伴う登記事項の変更はありません。

同時に、役員報酬に上限を設定ました。これにより非営利団体等への寄付金を残しやすくします。


法人の非営利化

今回の定款変更では、

1)配当可能な剰余金の全額を内部留保し、非営利団体等に寄付すること

2)解散時には、残余財産の全額を非営利団体等に寄付すること

3)前の2つの規定を変更する場合には、会社を解散しなければならないこと

規定しました(*1)。


法人が営利か非営利かのちがいは、株主への配当の有無、会社清算時の残余財産の株主への分配の有無によって決まります。つまり、1)2)が非営利化規定に当たります。3)は定款の再変更による「営利化」ができないようにするためのものです。

定款の変更は株主総会の特別決議でできます。これには議決権の4分の3以上が必要ですが、登記事項の変更に当たらなければ、それ以上の手続きは必要ありません。弊社では株式の95%を代表者が所有しているため、定款の変更が容易です。そのために3)の規定を設けました。


役員報酬の上限

社内規定(代表取締役決定書)で役員報酬の上限を設けました。対象は以下の全役員です。


上限は3つの役職ごとに設定しましたが、詳細は非公表とします。全役員の報酬上限の合計額は1,000万円より小さいとだけお伝えします。ただし、これらの上限は、当社や役員自身、またはその環境に大きな変化が生じたときに変更できると規定してあります。


以上により、本業を通じた社会貢献だけでなく、本業で得た収益の一部を社会貢献に回す形で、より広く社会に役立つ活動をしてまいります。


*1: 非営利化に関わる条文。定款全体はこちらをご覧ください。

(剰余金)
第 37 条 当会社は、配当可能な剰余金の全額を内部留保し、適宜な時期にその剰余金を社会貢献活動に携わる非営利団体または地方公共団体に寄付するものとする。

(残余財産)
第 38 条 当会社が解散した場合(ただし、合併又は破産によって解散した場合を除く)における残余財産は、解散に関する株主総会における決議を経た上で、その全額を社会貢献活動に携わる非営利団体または地方公共団体に寄付するものとする。

(非営利規定の変更)
第 39 条 この定款の第37条(剰余金)、第38条(残余財産)、及び本条の規定を変更し、株主への配当及び株主への残余財産の配分を可能にしようとする場合は、会社を解散しなければならない。



「非営利」の実質化

法人の「営利」と「非営利」の境目

「営利法人」と聞くと「私腹を肥やすことを目的として事業を営んでいる」という印象を受けます。営利法人である株式会社でも、すべての株式会社が私腹を肥やすことを目的としているわけではありません。逆に、非営利法人である一般社団法人などでも、私腹を肥やす目的に利用されているものがあるでしょう。

調べたところ、法人が営利か非営利かは、法人が稼ぎ出したお金を「株主が配当などの形で受け取れるかどうか」で区別されます(*1)。その法人が給料や役員報酬として支払っている金額が大きいか小さいかは、法人の営利・非営利とは関係がありません。


*1: 法人の営利・非営利の区分についての参考資料

1)「豊かな公」を支える資金循環システムに関する実態調査 平成19年度調査結果(平成20年6月23日公表) 

  第3章(2) https://www5.cao.go.jp/keizai2/2008/0623yutakanaooyake/honbun12.pdf

2)小松章「非営利分野における株式会社の新しい可能性について」(HERMES-IR(一橋大学機関リポジトリ収録)

3)司法書士内藤卓のLEGAL BLOG 非営利株式会社


なお、事業に「営利・非営利」の区分はありませんが、近いのが「収益事業」と「公益目的事業」の区分です。例えば、非営利法人である一般社団法人でも、「公益目的事業」の所得については法人税が「非課税」なのに対して、「収益事業」の所得には「課税」されるという違いがあります。

4)国税庁 一般社団法人・一般財団法人と法人税

5)一般社団法人設立サービス.NET 公益法人の「公益目的事業」と「収益事業」の定義

6)一般社団法人設立365.com 収益事業とは?


法人の「非営利」の意味

ところが、オーナー企業(*2)では、株主としてではなく、役員として報酬を受け取る選択肢があります(*3)。つまり株式会社を非営利化したとしても、その印象とは裏腹に「私腹を肥やす」道が残されていることになります(*4)。そうすると、株式会社の非営利化は、ただのイメージ戦略、印象操作になってしまいかねません。


*2: オーナー企業の定義は、ここでは経営者(やその家族)が大株主で、その他の株主がいないか実質的に分配の必要がない会社としておきます。

*3: 「同じ条件でどちらでも選択できる」というわけではありません。会社に利益を残して配当金として受け取る場合と、役員報酬として受け取る場合とでは税率などがちがいます。

*4: そもそも「私腹を肥やす」の意味があいまいですが、ここでは簡単に「高額の役員報酬を受け取ること」にしておきます。


「非営利」を実質化する方策

「非営利」の意味が、個人の所得等を大きくすることを目的とせず、それ以外の社会への貢献を目的とすることだとすると、法人の非営利化だけでは不十分です。何らかの形で個人の所得等に歯止めを設けておく必要があります。そのために役員報酬に上限を設けました。

そのうえで、会社の利益(≒営利であれば株主に残る利益)を(プラスから)ゼロに近づけようとすると、今度は、収益を抑えるか、費用を増やすことになってしまいます(*5)。

弊社の場合、「収益を抑える」は、会社の事業全体(朝尾が提供可能なキャパシティ)の中で、非営利・社会貢献性が高く、相対的に低単価のサービス提供の比率を高めることに当たります(*)。「その他の費用を増やす」は、非営利団体等への寄付金を増やす方向で考えています(*7)。しかし、環境の変化の影響などにより収益が減少することも想定されるため、ある程度の役員報酬を確保しつつ、これらの方策を実現していく経営の舵取りをしていくことになります。


(非営利実質化のための方策)

・役員報酬をある程度確保しながら上限を設ける

・非営利性の高い業務比率を高める

・非営利団体等への寄付金を増やす


*5: 会社の収益と費用などを単純化して数式の形で表すと次のようになります。

式①: 収益 - 役員報酬 - その他の費用 = 税引前利益(課税所得)

ここから「役員報酬」を右辺に移項すると

式①-2: 収益 - その他の費用 = 役員報酬 + 税引前利益(課税所得

左辺の「収益 -その他の費用」を一定とすると、それを右辺の「役員報酬」と「税引前利益」で分け合う関係がはっきりします。

このとき

式②: 税引前利益(課税所得) = 法人税 + 純利益(株主の取り分)

なので、役員報酬を最大化して税引前利益をゼロに近づければ、法人税も株主の取り分もゼロに近づくことになります。

しかし、

式①-2: 収益 - その他の費用 = 役員報酬 + 税引前利益(課税所得)

において、右辺の「役員報酬」に上限を設けた上で「税引前利益」を(プラスから)ゼロに近づけるには、左辺の「収益を抑える」か「その他の費用を増やす」か、になります(左辺が役員報酬の上限を上回る場合の話)。


*6: 2016年度から担当している関東学院大学での授業(非常勤講師としての業務)が、この一例です(ただし、本業務は当初、弊社で受託していましたが、本来的には雇用契約であるため、2021年度からは弊社業務としてではなく朝尾が個人として直接引き受ける形に切り替えました)。また、特定非営利活動法人であるITコーディネータ協会向けの講師業務も、この例に当てはまります。


*7: 寄付金が100% 費用(損金)になるわけではないです。「その他の費用」増やすとしては、持続可能性などに配慮した製品・サービスの利用のために、多少高いものを選ぶ道があります。

非営利化した株式会社の例

ネットで見つかったものを掲載します。「非営利型」と「非営利」のちがいは正確にはわかりません。「非営利株式会社」と称するには商号変更が必要と書かれているのを見たことがあります。弊社は商号変更しておりません。

*1: 弊社代表の朝尾直太は、多数いる eumo 社の株主の一人でもあります。