組織の体質 ~東芝の不正会計問題に思う
Post date: 2015/09/10 5:27:22
研修で会計分野を担当することが多い立場なので、東芝の不正会計問題は、
やはり衝撃的な事件です。
前に会計ルールがどのように悪用されたかを取り上げましたが、
より大きな問題は「組織の体質」です。
まず、組織の体質に圧倒的な影響力があり、責任を負っているのはトップマネジメントです。
と同時に、構成員も一定の責任を負っていると言えます。
不正を事実上強要する指示があったらどうするか、について私は答える立場にはありませんが、
会社員時代と独立して働いている今とでは、明らかに違う感覚があります。
外の風を直接受けるかどうかの違いです。
会社勤めのころ、ビジネスに関する情報は会社というフィルターを通して、
極めて限定的な受け取り方をしていました。
対外的な責任も、目の前のお客さんに対しては負うけれども、それ以外は直接負いません。
分業しているから当たり前かもしれませんが、そのぶん外の世界全般に対する感度は鈍ります。
年中エアコンの効いた部屋の中にいるような感覚です。
やがて「会社の中」が世界のほとんどであるかのように錯覚してきます。
自分の周りにまず会社があって、その外側に世界があるような感覚です。
そうなると会社の論理を優先しがちになります。
我田引水になりますが、会計や経営シミュレーションをきっかけにして、
事業の全体像を捉える経営的視点を養えば、
「社会全体の中に」会社や自分の仕事を位置づけられるようになります。
そういう目を持った構成員が大勢いる組織のほうが、自己修正する力が強い組織だと思います。
* * *
最初に就職した大手小売業を退職する半年ほど前に、
創業者肝いりの大規模な社員販売キャンペーンがあったことを思い出しました。
10万円近い商品を一人一点、半ば強制的に知人や家族親戚に売れというものです。
納得できなかったのですが、結局自分で一つ買って贈り物にしました。
退職した直接の理由ではありませんが、会社をいつでもやめる腹積もりができたのはその時でした。