マテリアリティ

マテリアリティ(materiality

元々は会計(企業情報開示)用語ですが、最近はそれ以外でも使われる場面が増えているように感じます。「重要課題」と訳されたり、カタカナのまま「マテリアリティ」と使われます。従来の財務報告(財務諸表など)での定義と、最近のサステナビリティ報告での定義には違いがあります。

(参考)Google 検索でトップに出てくる、「未来をおしえて!アミタさん」にも、わかりやすい説明が載っています。


1.財務報告での用語

会計用語としての material は IFRS (国際財務報告基準)で定義されています。財務諸表の利用者の意思決定に影響を与えるかどうか、がポイントです。(2018年の改訂、2020年から発効)

Information is material if omitting, misstating or obscuring it could reasonably be expected to influence the decisions that the primary users of general purpose financial statements make on the basis of those financial statements, which provide financial information about a specific reporting entity.

出所: https://www.ifrs.org/news-and-events/news/2018/10/iasb-clarifies-its-definition-of-material/

(朝尾意訳)
組織が報告する財務諸表において、ある情報が除外されていたり、誤っていたり、曖昧にされていたりすることによって、財務諸表の利用者が行う意思決定に影響を与えるようなら、その情報は「マテリアル」である。


2.サステナビリティ報告での用語

サステナビリティ報告書のガイドラインを定める「 GRI スタンダード」のマテリアリティ(マテリアルな項目;material topics )の捉え方は、IFRS とは異なります。

「重要課題」と言ってしまえば同じなのですが、「 GRI スタンダード」では、当然、財務諸表(財務面の情報)に限っておらず、利用者が行う意思決定に影響を与えるかどうかにも触れていません。広く、経済・自然環境・人的(社会的)な面に対して顕著な「インパクト」があるかどうかで捉えられています。財務的なマテリアリティに当てはまらなくても、軽視してはならないという説明もあります。

「インパクト」は「マテリアルな項目」に先立って定義されるもので、「経済面・自然環境面・人権を含む人的な面に対して、組織の活動や取引関係によってもたらされうる影響」です。持続的な発展に対して、プラスの影響もあればマイナスの影響もあります。

GRI 1: Foundation 2021,  p. 8; 2-2 Material topics

An organization may identify many impacts on which to report. When using the GRI Standards, the organization prioritizes reporting on those topics that represent its most significant impacts on the economy, environment, and people, including impacts on their human rights. In the GRI Standards, these are the organization’s material topics.

出所: https://www.globalreporting.org/how-to-use-the-gri-standards/gri-standards-english-language/

(朝尾意訳)
組織は報告すべきインパクトをいくつも認識しうる。GRI スタンダードを使う組織は、経済面・自然環境面・人権を含む人的な面に対してとくに顕著なインパクトをもたらす項目を重要度に応じて報告する。GRI スタンダードにおいては、こうした項目が組織にとってのマテリアルな項目である。