多くの人が経験している「自律分散型組織」の動き

自律分散型の組織では指示命令がない。とするとどんな風に人が動くのか? 想像がつかないという人もいるでしょうけど、ほとんどの人はこんな経験があるはずです。


会場の原状復帰作業――社外の研究会や社内の研修会などで、会議室のテーブル、イスのレイアウトを大きく変更したとき、終了後にみんなで元のレイアウトに戻す、あれのこと。

事務局の人が「時間のある人は残って、原状復帰に協力してください」と参加者に呼び掛ける。もちろん命令や強制ではないので、ここで帰る人もいる。

どのような状態に戻すかについては、たいてい事務局の人がホワイトボードに図を描いたり、口頭で説明したりして伝える。しかし、テーブルを動かす工程や、誰が何を運ぶかについての指示はない。

協力するために残った人は、周りを見て自分のできること、やるべきことを判断する。お互いにコミュニケーションを取り合って、うまく作業を進めることもある。もちろん、たくさん働く人や少ししか運ばない人やもいるが、目指すべき状態に向けて、それぞれが自発的に連係して動く。


これは身近な自律分散型の組織運営です。この例のように完全にフラットというわけではありません。呼びかける人と応える人がいるのは自然なこと。

確かに、テーブルやイスの流れだけを見たら、ムダな動きがあることも多いでしょう。しかし、事務局が作業分担を割り振ったり、テーブルを動かす順序を決めたりして、指示を出すのと比べたらどっちが効率的でしょうか? さらに参加者にとってはどっちが気持ちよくできるでしょうか?


(おまけ)
昔、日本ファシリテーション協会の集まりにちょくちょく参加していたころ、原状復帰作業をよくやりました。初対面のことも多い人たちと協力して行うその時間が、僕はなぜか好きでした。当時は理由までわからなかったのだけれど、今はわかります。その瞬間だけ自律分散型の組織が立ち上がるからです。